セリヌンティウスの舟（石持浅海）

セリヌンティウスの舟 (カッパノベルス)

確固たる信頼関係によるクローズド・サークル。状況設定は相変わらず抜群に上手い。警察が自殺と断定した事件を、敢えて故人の仲間たちが推理しなおす理由にも無理がない。でも、この真相はどうなんだ。謎解きのキレに文句はないんですが、動機の面で納得できないというか承服しかねるというか。こんな観念的なことで人は死ねるんですかね。別にリアリティが云々とか言いたいわけじゃないけど、途中まではやたら現実的なのに動機だけファンタジーなんだよなー。少なくとも、時化の海で死に掛けたことのないわたしにとってはファンタジーでした。

あ、でも、『走れメロス』というモチーフの使い方は見事だと思いました。と付け足しのように書いておこう。